『生活保護を受けるのは人生の敗北者』『怠け者』『国に厄介になってるダメな奴』といった差別的な考えに陥らないことが一番大切です。

自分は決してダメな奴と思わないこと。恥ずかしいと思わないこと。生活保護は国民の権利なので当然のことと強い意思を持つことです。


生活保護の申請から決定まで


申請する際の心構え


生活保護の申請は、役場の福祉事務所に提出しますが、どうしてもケースワーカーから見下されているように感じてしまうこともあります。「家族と相談してください」「ハローワークに行ってください」などと言われて申請をなかなか受け付けてもらえないことも多いです。

生活保護を支援してくれる団体や弁護士、司法書士等と同行すると申請受付がスムーズになる場合も結構あります。高齢者の場合は包括支援センターやケアマネに相談するとスムーズになると思います。


生活保護基準額


世帯全員が利用できる資産、働く能力、その他あらゆるものを活用したり、扶養義務者からの扶養を優先しても、毎月の世帯全体の収入額が国の定める生活保護基準額に不足する場合は生活保護を利用することができます。

自分の収入が生活保護を申請する基準にあるかどうかは、生活保護の自動計算サイト『生活保護.net』で簡単に調べられます。  

生活保護の金額を1分で自動計算します!生活保護.net

令和2年度の生活保護費を簡単な入力だけで自動計算します。全国1742市区町村に対応。まずはお住まいの都道府県・市区町村を選択、次にあなたの年齢、世帯構成などを入力してください。1分程度の入力であなたが受給できる生活保護費を計算します。


お住まいの住所地をクリックして世帯の人数分、年齢と障害手帳などの加算条件をチェックするだけです。『計算する』のボタンを押すだけで受給できる生活保護費の額が出ます。この金額は『住宅扶助費』が込みですので、 実際の生活保護基準額は『生活扶助費』の欄になります。


申請・調査・決定


申請主義


本人、同居の親族、扶養義務者からの申請が必要です。本人や家族が希望していないのに申請はできません。


調査


申請されると福祉事務所の職員が家庭訪問などの方法にて調査をします。必要がある場合は、銀行、生命保険会社、勤め先などの関係先を調査する場合もあります。

  • 現在の生活状況
  • 世帯員の健康状態
  • 扶養義務者の状況
  • 収入
  • 資産
  • 今までの生活状況


決定


申請日から14日以内(特別な理由がある場合は30日以内)に決定される。


生活保護を受けるための原則


生活に困窮する国民が生活保護を受けることは権利であり、生きるための最後のセーフティーネットです。以下の原則により適用、運用されています。


無差別平等(生活保護法2条)


すべての国民に無差別平等に適用されます。ですので、生活保護が必要になった理由や過去の経緯は問われません

住所不定のホームレスの場合でも、居宅を探したり、保護施設を利用して生活保護を申請することができます。


補足性の原則(生活保護法4条)


生活保護を受給する前に、あらゆるものを活用することが必要です。


資産の活用


預貯金、生命保険、損害保険、土地、家屋、自動車、貴金属などの資産は自分の生活費として売却するなどして活用できるものは活用することが要件になります。ただし、土地と家屋については、一定の条件のもとにその保有が認められています。

評価額30万円以下の土地、20万円以下の建物は『免税点』で非課税。評価額500万円以上だと家を担保に貸付(リバースモゲージ)を利用することになります。

生活保護費は借金返済にあてられません。住宅ローンにもあてられません。借金が理由で生活保護が受けられないことはありませんが、借金がある場合は法テラスなどで債務整理をしてもらい自己破産をして借金問題をクリアにする指導がなされます。

資産を活用するために自分の資産を把握しておくことが大切です。家計計画表を利用して整理しておきましょう。


能力の活用


働く能力のある方は、その能力に応じて働くことが必要です。若い人は、ハローワークに行くように言われます。病気で働けない場合は医師に診断書を書いてもらいましょう。

高齢の方で要介護認定を受けている方は働けませんので大丈夫です。


扶養義務者の援助


扶養義務者からの援助を受けることができるときはそれが優先します。

扶養義務者は、生活保持義務(夫婦間及び未成熟の子)、生活扶助義務(直系血族及び兄弟姉妹)、例外的な扶養義務(3親等内の親族)があります。詳しくは以下の記事も参考にしてください。

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民法上の扶養義務が一般的にあるのは、夫婦、直系血族、兄弟姉妹。上記以外の3親等内の親族が扶養義務を負うのは、特別な事情がある場合のみで、家庭裁判所の審判が必要。極めて限定的な場合に限られる。



他の制度の活用


生活保護制度以外の制度(医療保険、雇用保険、年金、恩給、手当、労災など)で活用できるものがあるときは、それが優先します。


世帯単位の原則(生活保護法10条)


他人を含めて、生計を一にしていれば同一世帯になります。世帯の収入が生活保護基準より少なければ、生活保護費受給対象になります。

世帯主に年金収入あるが酒に溺れているとか、長期入院せざるを得ないが入院費用が支払えないなどの場合は、例外として世帯分離という制度があります。


生活保護のよくあるQ&A


  • 生活保護の申請は原則として世帯全員で申請
  • 家や土地を所有していても処分価値が利用価値より著しく大きくない場合は所有可能。
  • 生活用品の保有は、地域での普及率70%を超える場合は認められる。
  • 自動車の保有は、障害のある人や、業務用に使う場合、公共交通機関の利用が困難な地域などは認められる場合もある。
  • 生活保護中の貯金は、一定額(東京都では6ヶ月分相当)の保有が認められる場合がある。
  • 基準内の家賃の住宅に転居する場合は、権利金、敷金、礼金、手数料、火災保険料、保証料などが、転宅資金として支給される。
  • 家財道具などの運搬に必要な転居費用は、生活扶助費の一時扶助より支給される。
  • 死亡した場合で誰も葬祭する人がいない場合、死亡地の市町村が葬祭執行。「墓地、埋葬等に関する法律」
  • 財産が残っていた場合、葬祭費用にあてられる。相続人がいない場合、国庫に帰属。
  • 入院前の居住地を所管する福祉事務所が保護の実施機関になる。入院前に居住地がなかった人は発病地を管轄する福祉事務所が保護の実施責任を負う。救急車で搬送された場合は、救護された現在地、直接病院に来た場合は当該医療機関の所在地を所管する福祉事務所が保護の実施責任を負う。
  • 入院中の医療費は医療扶助より全額負担される。生活扶助から『入院患者日用品費』が毎月22,680円、『一時扶助』として、寝間着代4,300円、紙おむつ代19,900円以内(平成29年度基準1級地-1の例)が支給される。住宅扶助費が支給されている場合で、6ヶ月以内に退院の見込みがある場合は、6ヶ月を限度に住宅扶助費が支給される。6ヶ月を超えた場合でも、以降、3ヶ月以内に退院が見込まれる場合は、3ヶ月を限度に支給される。
  • 生前の家賃や生活費等の支払いについて、連帯保証人でも相続放棄するのであれば支払う必要なし。請求書がきてもそのままでOK。相続放棄するのであれば本人の残金から支払うことはできない。本人の残金は葬儀費用にあてる。
  • 香典の収入は、所得としての認定をされる事はなく、香典は申請や報告の義務がない。故人の為や残されたご家族の生活の為に使って構わない。