『住民税非課税』ってよく聞くのですが、収入が少なくて税金が安くなるぐらいのことしか知らなくて、『住民税』自体もよく知りませんでした。

実は法律上『住民税』という用語はなく道府県民税市町村民税を合わせたものを『住民税』と呼んでいます。


住民税とは


住民税とは、道府県民税市町村民税を合わせたものでです。所得税と同じように所得をもとに計算して納める税金ですが、所得税は国税で、住民税は地方税という点が違います。

住民税非課税とは、均等割、所得割の両方が非課税のことですが、均等割の方が厳しいので、均等割が免除になる条件を満たせばいいことになります。

東京23区の場合、年金受給中の高齢夫婦世帯の生計者が、211万円を超えなければ住民税非課税世帯になります。

地域によっては211万円より少し下がりますが、これは、生活保護制度の級地によって基準額が決められているからです。


※令和2年度税制改正にて、年金等控除額が10万円減っていますが、非課税を判定する額に10万円を加算することになっていますので、非課税額に変更はありません。



地域の級地区分とは


日本全国を1級地から3級地まで3つに分類。各級地の中で「○級地-1」「○級地-2」と2つに分け、6段階で級地を区分する方式。生活保護の生活扶助基準額も級地によって変わります。

地域区分(WikiPedia)で自分が住んでいる市町の級地が分かります。


  • 津市、四日市市、岐阜県岐阜市(2級地‐1)
  • 三重県松阪市、桑名市 (2級地-2)
  • 東員町、川越町(3級地-1)


住民税が非課税になる対象の人


  1. 生活保護を受けている人
  2. 障害者、未成年者、寡婦または寡夫で、前年の合計所得金額が125万円+10万円以下の人
  3. 前年の所得金額が基準以下の人


+10万円は令和2年度(令和3年分所得)から適用される税制改正によるもの

※1と2の法令根拠は以下


地方税法第24条の5(道府県民税)


道府県は、次の各号のいずれかに該当する者に対しては、道府県民税の均等割及び所得割(第二号に該当する者にあつては、第五十条の二の規定により課する所得割(以下この款及び次款において「分離課税に係る所得割」という。)を除く。)を課することができない。ただし、この法律の施行地に住所を有しない者については、この限りでない。
一 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)の規定による生活扶助を受けている者
二 障害者、未成年者、寡婦又は寡夫(これらの者の前年の合計所得金額が百二十五万円を超える場合を除く。)

2 分離課税に係る所得割につき前項第一号の規定を適用する場合における同号に掲げる者であるかどうかの判定は、退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の一月一日の現況によるものとする。

3 道府県は、第二百九十五条第三項の規定により個人の市町村民税の均等割を課することができないこととされる者に対しては、当該均等割と併せて賦課徴収すべき個人の道府県民税の均等割を課することができない


地方税法第295条(市町村民税)


市町村は、次の各号のいずれかに該当する者に対しては市町村民税(第二号に該当する者にあつては、第三百二十八条の規定により課する所得割(以下「分離課税に係る所得割」という。)を除く。)を課することができない。ただし、この法律の施行地に住所を有しない者については、この限りでない。
一 生活保護法の規定による生活扶助を受けている者
二 障害者、未成年者、寡婦又は寡夫(これらの者の前年の合計所得金額が百二十五万円を超える場合を除く。)

2 分離課税に係る所得割につき前項第一号の規定を適用する場合における同号に掲げる者であるかどうかの判定は、退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の一月一日の現況によるものとする。

3 市町村は、この法律の施行地に住所を有する者で均等割のみを課すべきもののうち、前年の合計所得金額が政令で定める基準に従い当該市町村の条例で定める金額以下である者に対しては、均等割を課することができない


住民税が完全に非課税になる所得要件


住民税が完全に非課税になる計算式


合計所得金額が下記の金額以下。 (*)は扶養親族等がいる場合のみ加算

1級地35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の数)+(*)21万円
2級地: 31.5万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の数)+(*)18.9万円
3級地: 28万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族等の数)+(*)16.8万円

※上記額に10万円を加算(令和2年度税制改正)


独居の場合は35万円が基準。同居者等がいる場合はその人数と21万円が基準になります。この基準額が級地によって異なります。2級地は0.9、3級地は0.8をかけることでこの金額になります。


なぜ、このような計算式になるのかは、地方税法、施行令、施行規則を見るとわかりますが、まずは次の例を確認してください。



年金受給中の独居高齢者の場合の非課税ライン


150万円程度が住民税非課税のライン。110万円は公的年金等控除額。10万円は令和2年度税制改正によるもの。

  • 1級地:35万円+110万円+10万円=155万円
  • 2級地:31.5万円+110万円+10万円=151.5万円
  • 3級地:28万円+110万円+10万円=148万円



年金受給中の高齢者夫婦世帯の非課税ライン


200万円程度が住民税非課税のライン

  • 1級地:91万円+110万円+10万円=211万円
  • 2級地:81.9万円+110万円+10万円=201.9万円
  • 3級地:72.8万円+110万円+10万円=192.8万円



均等割の非課税(令47条の3、則9条の3)


地方税法施行令 第47条の3


第二百九十五条第三項に規定する政令で定める基準は、次のとおりとする。

一 第二百九十五条第三項の市町村の条例で定める金額は、同項に規定するの施行地に住所を有する者の同一生計配偶者及び扶養親族の数に一を加えた数を当該条例で基本額として定める一定金額に乗じて得た金額(その者が同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、当該乗じて得た金額に当該条例で加算額として定める一定金額を加算した金額)とするものとすること。

二 前号の基本額として定める一定金額は、三十五万円を超えない範囲内において、三十五万円に、生活保護法第八条第一項の規定により厚生労働大臣が定める保護の基準における地域の級地区分(前年の十二月三十一日における地域の級地区分とする。)ごとに、総務省令で定める世帯につき前年において同法第十一条第一項第一号から第三号までに掲げる扶助に要した費用として算定される金額を勘案して総務省令で定める率で、当該市町村が同日において該当した当該地域の級地区分に係るものを乗じて得た金額を参酌して定めるものとすること。

三 第一号の加算額として定める一定金額は、二十一万円を超えない範囲において、二十一万円に、前号に規定する総務省令で定める率で当該市町村が前年の十二月三十一日において該当した同号に規定する地域の級地区分に係るものを乗じて得た金額を参酌して定めるものとすること。


地地方税法施行規則 第9条の3


政令第四十七条の三第二号に規定する総務省令で定める世帯は、次の各号のいずれにも該当する世帯とする。
一 夫、妻及び二人の子からなる世帯であること。
二 借家に居住する世帯であること。
三 収入のない世帯であること。

2 政令第四十七条の三第二号に規定する総務省令で定める率は、次の各号に掲げる生活保護法第八条第一項の規定により厚生労働大臣が定める保護の基準における地域の級地区分(前年の十二月三十一日における地域の級地区分とする。)に応じ、当該各号に定める率とする。
一 一級地 一・〇
二 二級地 〇・九
三 三級地 〇・八


所得割の非課税(法附則3条の3)


道府県は、当分の間、道府県民税の所得割を課すべき者のうち、その者の当該年度の初日の属する年の前年(以下この条、次条第二項から第十一項まで、附則第四条の二第二項から第十一項まで、附則第五条から第三十五条の三の二まで、附則第三十五条の三の三第一項及び第六項、附則第三十五条の四から第四十四条まで並びに附則第四十五条において「前年」という。)の所得について第三十二条の規定により算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が、三十五万円にその者の同一生計配偶者及び扶養親族の数に一を加えた数を乗じて得た金額(その者が同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、当該金額に三十二万円を加算した金額)以下である者に対しては、第二十四条第一項の規定にかかわらず、道府県民税の所得割(第五十条の二の規定により課する所得割を除く。)を課することができない

2 道府県は、当分の間、三十五万円に道府県民税の所得割の納税義務者の同一生計配偶者及び扶養親族の数に一を加えた数を乗じて得た金額(その者が同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、当該金額に三十二万円を加算した金額)が、第一号に掲げる額から第二号に掲げる額と第三号に掲げる額との合計額を控除した金額を超えることとなるときは、当該超える金額に第二号に掲げる額を同号に掲げる額と第三号に掲げる額との合計額で除して得た数値を乗じて得た金額を、当該納税義務者の第三十五条及び第三十七条の規定を適用した場合の所得割の額から控除するものとする。
一 当該納税義務者の前年の所得について第三十二条の規定により算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額
二 当該納税義務者の第三十五条、第三十七条から第三十七条の三まで、附則第五条第一項、附則第五条の四第一項、附則第五条の四の二第一項及び附則第五条の五第一項の規定を適用して計算した場合の所得割の額
三 当該納税義務者の第三百十四条の三、第三百十四条の六から第三百十四条の八まで、附則第五条第三項、附則第五条の四第六項、附則第五条の四の二第五項及び附則第五条の五第二項の規定を適用して計算した場合の所得割の額

3 前項の規定の適用がある場合における第三十七条の四の規定の適用については、同条中「前三条」とあるのは、「前三条並びに附則第三条の三第二項」とする。

4 市町村は、当分の間、市町村民税の所得割を課すべき者のうち、その者の前年の所得について第三百十三条の規定により算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が、三十五万円にその者の同一生計配偶者及び扶養親族の数に一を加えた数を乗じて得た金額(その者が同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、当該金額に三十二万円を加算した金額)以下である者に対しては、第二百九十四条第一項の規定にかかわらず、市町村民税の所得割(分離課税に係る所得割を除く。)を課することができない

5 市町村は、当分の間、三十五万円に市町村民税の所得割の納税義務者の同一生計配偶者及び扶養親族の数に一を加えた数を乗じて得た金額(その者が同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、当該金額に三十二万円を加算した金額)が、第一号に掲げる額から第二号に掲げる額と第三号に掲げる額との合計額を控除した金額を超えることとなるときは、当該超える金額に第二号に掲げる額を同号に掲げる額と第三号に掲げる額との合計額で除して得た数値を乗じて得た金額を、当該納税義務者の第三百十四条の三及び第三百十四条の六の規定を適用した場合の所得割の額から控除するものとする。
一 当該納税義務者の前年の所得について第三百十三条の規定により算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額
二 当該納税義務者の第三百十四条の三、第三百十四条の六から第三百十四条の八まで、附則第五条第三項、附則第五条の四第六項、附則第五条の四の二第五項及び附則第五条の五第二項の規定を適用して計算した場合の所得割の額
三 当該納税義務者の第三十五条、第三十七条から第三十七条の三まで、附則第五条第一項、附則第五条の四第一項、附則第五条の四の二第一項及び附則第五条の五第一項の規定を適用して計算した場合の所得割の額

6 前項の規定の適用がある場合における第三百十四条の九第一項の規定の適用については、同項中「前三条」とあるのは、「前三条並びに附則第三条の三第五項」とする。


住民税非課税世帯の優遇制度


  • 国民健康保険料の軽減
  • 後期高齢者医療保険料の軽減
  • 高額療養費の軽減・限度額適用認定証を取得できる(入院した場合の食事代軽減、外来&入院費用の上限軽減)

  • 介護保険料の軽減(年間5万円ぐらい安くなるかも)
  • 貯金等残高によるが介護保険負担限度額認定証が取得できるかも(施設入所やショートステイを利用した場合の居室&食事代を軽減) ※施設入所の場合、月に5万円ぐらい安くなることも。

  • 保育料の無償化(0歳から2歳まで)
  • 高等教育の減免
  • NHK受信料の免除(障害者手帳あれば)

などなどです。


まとめ


医療や介護の費用については、非課税世帯かどうかで負担が大きく異なってきます。長期入院や介護施設に入所していたりするとなおさらです。

子どもと同居しているだけで、年金は少ないのに課税世帯、つまりお金がある世帯と扱われている方も多いです。

世帯分離をしても戸籍はもちろんそのままでOKですし、住民基本台帳にもとづく手続きですので違法ではありません。そういう方は一度、世帯分離を検討するのも一つの選択肢だと思います。