実地指導の準備と対策【ケアマネ初心者も安心】
2018年4月より、居宅介護支援事業所の指定権限が都道府県から市町村に移行しました。これにより、指導・監査も市町村が実施することになりました。
市町村の介護保険事業計画には介護給付適正化の計画を記載されており、実地指導の件数も増え、点検項目もより詳細になっていくことが想定されます。
令和元年5月29日、厚生労働省が介護保険のサービスを提供する事業所に対する実地指導の運用指針を新たに策定。
従来より数を減らした標準確認項目と標準確認文書を規定しています。
1.心構えと準備
実地指導は概ね3年に1度のペースで行われています。
利用者やサービス事業所とのやりとり、記録の作成、給付管理まで、膨大な業務をか変えるケアマネジャーは、時間に追われて、記録を忘れていることも多いと思いますので、事前に確認する必要があります。
実地指導は義務ですので、これを機会に、仕事の流れ、書類の管理、確認の仕組みなどを見直すタイミングと捉えるといいと思います。
① 実地指導の通知文書
市区町村から実施日の約1ヶ月前(最近は2週間前)に通知文書が届きます。通知文書には下記の内容が記載されています。
- 実施日、場所
- 行政側の指導担当者
- 事前提出書類
- 当日準備する書類
② 事前提出書類を確認する
事前提出書類が記載されていますので期限までに提出します。
- 運営規定
- 契約書
- 重要事項説明書
- 職員名簿
- 勤務状況表
③ 当日準備書類を確認する
・人員に関する書類
- 組織図
- 職員勤務表(前年度及び指導月までの勤務予定と実績)
- 常勤、非常勤の区分及び1ヶ月の勤務時間が分かる書類
- 専従、兼務の状況がわかる書類
- 出勤簿かタイムカード
- 職員の履歴書や資格、経験年数がわかる書類
・運営に関する書類
- 定款
- 運営規定
- 重要事項を記載した説明文書
- 利用者の同意に関する記録
- 居宅介護支援台帳(居宅サービス計画書、アセスメント、サービス担当者会議等、モニタリング)
- 利用料の領収書
- 就業規則
- 雇用契約書、雇用通知または辞令
- 緊急時の連絡体制に関する書類
- 職員研修関係記録
- 秘密保持に関する就業時の取り決め
- 苦情に関する記録
- 事故に関する記録
・介護報酬に関する記録
- 介護給付費明細書
- 介護給付費請求書
- 給付管理票
2.実地指導のルールとポイント
指導担当者からファイル等の提示を求められた場合は、迅速に出すことが求められるので、書類やデスクを整理整頓しておく必要があります。
① 設備(事業所の平面図の確認)
事業所のレイアウトが届出時と同一であるかを確認されます。基準面積はありませんが変更があった場合には、変更届を提出しておく必要があります。
② 設備(相談室)
居宅介護支援事業所には、プライバシーの保護に配慮した相談室の設置が義務付けられています。少なくとも四方がパーテーション等で仕切られ、プライバシーの保護に配慮された状況であることが求められます。
※荷物置き場になっている場合は片付けましょう。
③ 設備(掲示物)
指導担当者が当日最初に行うことに事業所内の掲示物のかくにんがあります。運営基準に示される掲示物は次の3つです。
- 運営規定の概要
- 従業者の勤務体制
- 利用料その他のサービス選択に資すると認められる重要事項
④ 人員(従業者の配置基準)
実地指導の大きな確認ポイントです。人員配置基準を満たしていないと指定申請そのものが受理されません。また、常勤換算で何名配置になっているかなどは介護報酬にも関わるので確認も入念に行われます。また、常勤、非常勤の雇用形態によって勤務時間も代わりますので、雇用契約書、勤務日数、勤務時間についても詳細に確認されます。
- 職員の勤務実績に誤りがないか
- 兼務している職員がいる場合、勤務時間の重複はないか
⑤ ケアマネジメント
・アセスメント、ケアプラン
- 利用者、家族にケアプランに位置付けるサービス事業所について、複数の事業所の紹介を求めることが可能であることや、ケアプランに位置付けた理由を求めることが可能であることを説明しているか
- アセスメントとケアプランの整合性や妥当性(頻回な生活介護)
- 利用者、家族にケアプラン内容の説明と同意をしているか
- ケアプランを利用者、サービス提供事業者へ交付しているか
- 限度額いっぱいの利用者は重点的にチェックされる
・サービス担当者会議
- 実施時期(新規、更新、変更)に開催されているか。軽微変更の場合はその理由が記載されているか
- 欠席者に対して照会により意見を求めているか
- 専門的な見地からの意見を記載しているか
・モニタリング
毎月1回、利用者の居宅を訪問し、モニタリングの実施記録があるか。
・主治医の指示の確認
訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、短期入所療養介護、定期巡回随時訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護といった医療系サービスをケアプランに位置付ける場合には、主治医の指示が必要です。利用者の同意を得て主治の医師または歯科医師の意見を求めているか、またケアプランを交付しているか。
⑥ 報酬(介護報酬各加算関連)
介護報酬の加算要件を満たしていることが確認できる記録の内容を確認されます。
- 初回加算
- 入院時情報連携加算、退院退所加算
- 特定事業所加算(居宅介護支援における特定事業所加算に係る基準の遵守状況に関する記録を毎月作成し、要件を満たしているか)
⑦ 個人情報(個人情報使用の同意)
本人及び家族に対して個人情報使用の同意がとれているかどうか。
⑧ 個人情報(秘密保持等)
職員雇用の際に守秘義務は締結されているか。
⑨ 記録の保管
介護保険法では「利用完結の日から2年」と定められています。ただし、最近では、多くの市町村の条例で5年と定めていることが多くなっています。利用完結の日とは、契約終了の日ですので、現在利用中の利用者は、全期間の記録の保管義務があります。
契約終了者に関しては、契約終了日と保管終了日を明記しておくといいです。
⑩ 苦情処理
苦情報告書、ヒヤリハット報告書、事故報告書等、対応内容の記録が確認されます。
3.指導後の対応方法
実地指導の結果は、当日口頭で伝えられ、約1ヶ月後に実地指導結果通知および改善指示が送付されます。
- 指摘事項を確認
- 改善状況報告書を作成
- 指導内容を法人内で共有
ケアマネジャーの業務は多岐にわたり、膨大なため、記録ミスや漏れ、紛失の可能性も少なくありません。
実地指導を有効に活用して、今後のチェック体制、仕組みづくりに生かしてください。
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