後期高齢者医療制度の概要【ケアマネが覚えておきたい】
1.後期高齢者医療制度とは
①対象者(被保険者)
- 75歳以上のすべてのかた
- 65歳以上75歳未満で一定の障害があり、申請により広域連合の認定を受けたかた
※後期高齢者医療制度の被保険者になると、それまで加入していた国民健康保険や会社の健康保険から脱退することになります。
ただし、生活保護を受けているかたは、後期高齢者医療制度の被保険者になれません。
・住所地特例
県外に住所を移したときは、新しい都道府県の広域連合の被保険者となりますが、新しい住所地が高齢者施設や病院である場合は、引き続き元の広域連合の被保険者のままとなります。
・一定の障害とは
- 障害年金 1級、2級
- 身体障害者手帳 3級以上、4級の一部
- 療育手帳 A1、A2
- 精神障害者保健福祉手帳 1級、2級
75歳の誕生日に、自動的に後期高齢者医療制度の被保険者となります。後期高齢者医療制度の保険証は誕生日の前月に送付されます。
限度額適用・標準負担額減額認定証、特定疾病療養受療証が必要とされるかたは申請が必要です。
夫が後期高齢者制度の被保険者になると、夫の会社の健康保険の被扶養者だった妻は、会社の健康保険を抜けて、国民健康保険等への加入手続が必要になります。
②保険証
後期高齢者医療被保険者証が1人に1枚交付されます。毎年8月1日付けで更新します。
新しい保険証は7月下旬までに送付されます。
・自己負担割合
- 1割 一般、低所得Ⅱ〜Ⅰ
- 3割 現役並み所得者Ⅲ〜Ⅰ
自己負担割合は前年中の所得(住民税課税所得)により判定されます。
住民税課税所得とは、収入金額から必要経費を差し引いた総所得金額等から、さらに各種所得控除(社会保険料控除、医療費控除等)を差し引いて算出したものです。 毎年6月にお住まいの区市町村から送付される住民税の納税通知書等で確認できます。
③所得区分
・現役並み所得者
現役並み所得者Ⅲ 前年中の所得(住民税課税所得)が690万円以上の後期高齢者医療制度の被保険者及びこのかたと同じ世帯に属する被保険者。
現役並み所得者Ⅱ 前年中の所得(住民税課税所得)が380万円以上の後期高齢者医療制度の被保険者及びこのかたと同じ世帯に属する被保険者。
現役並み所得者Ⅰ 前年中の所得(住民税課税所得)が145万円以上の後期高齢者医療制度の被保険者及びこのかたと同じ世帯に属する被保険者。
3割負担になる境目の所得145万円以上は、収入が年金だけの場合、最低でも120万円の年金等控除があるので、265万円以上の年金収入のかた。
同じ世帯で75歳未満のかたの所得が高くても現役並み所得者の所得区分には関係ない。同じ世帯の後期高齢者医療制度の被保険者のかたの所得による。
・一般
現役並み所得者、低所得者以外のかた
・低所得
低所得Ⅱ 住民税非課税世帯に属する被保険者(低所得Ⅰ以外)
低所得Ⅰ 住民税非課税世帯のうち、すべての世帯員の各所得が0円となるかた。ただし、公的年金等控除額は80万円として計算する。
同じ世帯に、働いて課税されている家族等が居る場合、低所得にはならない。
その働いて課税されているかたが75歳未満であれば、現役並み所得者にはならず、一般になるので、1割負担のまま。
ただし、月額上限や入院した場合の食費や居住費は変わる。
2.受けられる給付
①限度額適用認定証
限度額適用認定証(現役並み所得Ⅱ・Ⅰ) 医療機関等の窓口へ提示することにより、①自己負担額が各区分までのお支払いとなります。
限度額適用・標準負担額減額認定証(低所得Ⅱ・Ⅰ) 医療機関等の窓口へ提示することにより、①自己負担額と②入院時の食事代等が各区分までのお支払いとなります。
②入院した時の負担
限度額適用・標準負担額減額認定証を医療機関の窓口で提示しない場合、所得区分は一般のかたと同額になります。
入院(療養病床以外) | ||
所得区分 | 1食あたり | |
現役並み所得者 | 一般 | 460円 |
低所得Ⅱ | 過去12ヶ月の入院日数が90日以内 | 210円 |
過去12ヶ月の入院日数が90日超 | 160円 | |
低所得Ⅰ | 100円 |
療養病床に入院になると食費の負担が少し変わるのと、居住費の負担が発生します。
療養病床とは、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床をいいます。
入院(療養病床)医療区分Ⅰ | |||
所得区分 | 1食あたり | 1日当たりの居住費 | |
現役並み所得者 | 一般 | 460円 | 370円 |
低所得Ⅱ | 210円 | ||
低所得Ⅰ | 130円 | ||
低所得Ⅰのうち老齢福祉年金受給者 | 100円 | 0円 |
入院(療養病床)医療区分Ⅱ・Ⅲ | |||
所得区分 | 1食あたり | 1日当たりの居住費 | |
現役並み所得者 | 一般 | 460円 | 370円 |
低所得Ⅱ | 過去12ヶ月の入院日数が90日以内 | 210円 | |
過去12ヶ月の入院日数が90日以内 | 160円 | ||
低所得Ⅰ | 100円 | ||
低所得Ⅰのうち老齢福祉年金受給者 | 100円 | 0円 |
医療区分とは、平成18年7月から導入された患者分類の方法です。
医療療養病床の診療報酬の支払いは、医療区分とADL区分により患者を分類し、その組み合 わせにより評価されています。
医療区分Ⅲ | 疾患・状態 | ・スモン ・医師及び看護師により、常時監視・管理を実施している状態 |
医療処置 | ・24時間持続点滴 ・中心静脈栄養 ・人工呼吸器使用 ・ドレーン法 ・胸腹腔洗浄 ・発熱を伴う場合の気管切開、気管内挿管 ・感染隔離室における管理 ・酸素療法(酸素を必要とする状態かを毎月確認) | |
医療区分Ⅱ | 疾患・状態 | ・筋ジストロフィー ・多発性硬化症 ・筋萎縮性側索硬化症 ・パーキンソン病関連疾患 その他の難病(スモンを除く) 医 療 ・ ・脊髄損傷(頸髄損傷) ・慢性閉塞性肺疾(COPD) ・疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍 ・肺炎 ・尿路感染症 療 ・リハビリテーションが必要な疾患が発症してから30日以内 ・脱水かつ発熱を伴う状態 区 分 2 リ リテ ション 必要な疾患 発症し ら 以内 脱水 発熱を伴う状態 ・体内出血 ・頻回の嘔吐かつ発熱を伴う状態 ・褥瘡 ・末梢循環障害による下肢末端開放創 ・せん妄 ・うつ状態 ・暴行が毎日みられる状態(原因・治療方針を医師を含め検討) |
医療処置 | ・透析 ・発熱又は嘔吐を伴う場合の経腸栄養 ・喀痰吸引(1日8回以上) ・気管切開・気管内挿管のケア ・頻回の血糖検査 ・創傷(皮膚潰瘍 ・手術創 ・創傷処置) | |
医療区分Ⅰ | 医療区分2・3に該当しない者 |
③高額療養費
1ヶ月の医療費が高額になった場合、お住まいの市町村担当窓口に申請すると、後日、自己負担限度額を超えた額が支給されます。
所得区分 | 自己負担限度額(月額)世帯合算含む | ||
外来(個人) | 入院 | ||
現役並み所得者 | Ⅲ | 252,600円+(医療費ー842,000円)×1% | |
Ⅱ | 167,400円+(医療費ー558,000円)×1% | ||
Ⅰ | 80,100円+(医療費ー267,000円)×1% | ||
一般 | 18,000円 | 57,600円 | |
低所得 | Ⅱ | 8,000円 | 24,600円 |
Ⅰ | 15,000円 |
過去12ヶ月内に世帯で3回以上の高額療養費が支給されている場合などは額が変わってきます。
一度申請すると、以後は登録した口座に自動的に振り込まれますので、申請は初回のみです。
自己負担限度額は、医療機関ごと、入院と外来別です。
④特定疾病の治療
厚生労働大臣が指定する特定疾病(人工透析など)の場合で、特定疾病療養受療証があるかたは、毎月の自己負担額は、医療機関ごと(入院・外来別)に10,000円までとなります。
⑤高額介護合算療養費
被保険者と同じ世帯で、後期高齢者医療制度、介護保険の両方から給付を受けることによって1年間の自己負担額が高額になった場合、双方の自己負担額(8月から翌年7月分まで)で合算し、限度額を超えた額が後日支給されます。
所得区分 | 後期高齢者医療制度+介護保険の自己負担(年額) | |
現役並み所得者 | Ⅲ | 212万円 |
Ⅱ | 141万円 | |
Ⅰ | 67万円 | |
一般 | 56万円 | |
低所得 | Ⅱ | 31万円 |
Ⅰ | 19万円 |
自己負担額は、高額療養費等の支給額を控除した額。
後期高齢者医療制度の被保険者以外のかたの自己負担額は合算されません。
3.保険料について
①保険料の計算方法
後期高齢者医療制度の保険料は、被保険者一人ひとりが納めます。
均等割額と所得割率は国の基準に基づき、各都道府県の広域連合ごとに条例で定めます。
毎年の保険呂う決定通知書は7月に届きます。
- 均等割額 被保険者一人当たり42,965円(三重県)
- 所得割額 (前年中の所得金額等ー33万円)×所得割率8.86%(三重県)
②保険料の軽減
基準日における同一世帯の被保険者および世帯主の前年中の総所得金額等の合計が一定金額以下である場合。
③保険料の支払い方法
保険料はお住まいの市町に納めます。
年金額が18万円以上の年金受給者は、年金から天引き。(特別徴収)
天引きにならない場合は、口座振替、納付書などで納めます。
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