「急な入院で医療費が高くて払えません・・・」入院をしたり、急に病気が見つかったりすることは少なくありませんよね。日本の医療制度はよくできていて、基本的には、どんなに重い病気になっても、年収の2〜3割程度に医療費が収まるようになっています。

医療保険被保険者証

まず、医療保険の被保険者証を見てみましょう。

 ① 法番号

保険者番号の最初の2桁を法番号といい、加入している医療保険の種類が分かります。中小企業に勤めている人は01、市町職員だと32、後期高齢だと39・・などが分かります。
加入している医療保険の種類によって、限度額適用認定証を申請する際に必要な書類や提出先が異なりますので、この番号と保険者名称で必要書類をWEBからダウンロードします。
保険者    保険制度法番号
被用者保険  協会けんぽ  全国健康保険協会 01
協会けんぽ  船員       02
協会けんぽ  日雇特例一般療養 03
協会けんぽ  日雇特例特別療養 04
健康保険組合 組合管掌健康保険 06
駐屯部隊   防衛省職員    07
共済組合   国家公務員共済  31
共済組合   地方公務員共済  32
共済組合   警察共済     33
共済組合   公立学校私立学校 34
健康保険組合 退職       63
共済組合   退職 国家公務員 72
共済組合   退職 地方公務員 73
共済組合   退職 警察    74
共済組合   退職 学校    75
国民健康保険 市町村    一般国保     なし
組合     国保組合     なし
市町村    退職(年金受給者)67
後期高齢者  広域連合主に後期高齢者39

 ② 都道府県番号

その次の2桁は、都道府県番号です。自分の住民票ではなく、保険者が在住する都道府県です。難病申請する場合は、自分の住民票の管轄する保健所に書類を提出するので注意が必要です。
番号都道府県番号都道府県番号都道府県
01北海道17石川県33岡山県
02青森県18福井県34広島県
03岩手県19山梨県35山口県
04宮城県20長野県36徳島県
05秋田県21岐阜県37香川県
06山形県22静岡県38愛媛県
07福島県23愛知県39高知県
08茨城県24三重県40福岡県
09栃木県25滋賀県41佐賀県
10群馬県26京都府42長崎県
11埼玉県27大阪府43熊本県
12千葉県28兵庫県44大分県
13東京都29奈良県45宮城県
14神奈川県30和歌山県46鹿児島県
15新潟県31鳥取県47沖縄県
16富山県32島根県  

高額療養費

医療費が高くて払えない場合、高額療養費について考えてみましょう。

高額療養費は、1ヶ月にかかった医療費の自己負担分が限度額を超える場合に、申請することで、超過分が後日還付される制度です。

高額療養費の計算は、月別、医療機関別、同じ医療機関でも医科と歯科は別、入院と外来は別です。高額療養費は一月単位で計算するので同じ入院日数でも、同一月内か、月を跨いでいるのかによって、全体の負担額が変わってくることがあります

自己負担限度額の計算方法は69歳以下と70歳以上で異なります。

 ① 69歳以下の方の上限額

自分の場合は、適用区分ウになるので、例えば入院して一月に100万円の医療費がかかったとしても申請すれば91万円程度は戻ってくるので、9万円程度の負担ですみます。
適用区分ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円〜 
健保:標報83万円以上 
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770~約1,160万円 
健保:標報53万〜79万円 
国保:旧ただし書き所得600万〜901万円
167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370~約770万円 
健保:標報28万〜50万円 
国保:旧ただし書き所得210万〜600万円
80,100円+(医療費-267,000)×1%
~年収約370万円 
健保:標報26万円以下 
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
住民税非課税者35,400円

1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えないときでも、同 じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は21,000円以上であることが必要)を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

 ② 70歳以上の方の上限額

適用区分外来(個人ごと)ひと月の上限額(世帯ごと)
現役並み年収約1,160万円〜 
標報83万円以上
課税所得690万円以上
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770万円〜約1,160万円 
標報53万円以上
課税所得380万円以上
167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370万円〜約770万円 
標報28万円以上
課税所得145万円以上
80,100円+(医療費-267,000)×1%
一般年収156万〜約370万円 
標報26万円以下 
課税所得145万円未満等
18,000円
年14万4千円
57,600円
住民税非課税等II 住民税非課税世帯8,000円24,600円
I 住民税非課税世帯 
(年金収入80万円以下など)
15,000円

70歳以上は、外来だけの上限額も設定されています。70歳以上は、それぞれの額にかかわらず月ごとに合算して高額療養費を請求することができます(同じ医療保険に加入している家族の分も合算できる)。現役並み所得者の窓口負担は3割。それ以下は1割です。

現役並み所得者の適用区分は、「後期高齢者医療制度の被保険者及びこのかたと同じ世帯に属する被保険者」です。働いて課税されている世代の人と同じ世帯でも適用区分には関係ありません。
しかし、「後期高齢者医療制度の被保険者及びこのかたと同じ世帯に属する被保険者」の所得が低所得(住民税非課税世帯)に該当する場合、働いて課税されている世代の人と同じ世帯にいると、住民税非課税世帯ではなくなる(一般世帯)ので、医療費や食事代の限度額が上がってしまいます。

 ③ 現役並み所得者について

70歳以上の者の患者負担(保険医療機関の窓口で支払う金額)の割合は、原則1割ですが、現役並み所得の有る者は、現役世代と同じ3割を負担することになります

後期高齢者医療制度世帯内に課税所得*1の額が145万円*2以上の被保険者がいる場合
国民健康保険世帯内に課税所得の額が145万円以上の被保険者(70~74歳に限る)がいる場合
被用者保険被保険者が70歳以上であって、その標準報酬月額が28万円*3以上である場合
  1. 収入から公的年金等控除、必要経費、基礎控除、給与所得控除等の地方税法上の控除金額(扶養控除廃止に伴う調整控除を含む。)を差し引いた後の額。
  2. 現役世代の夫婦2人世帯をモデルとし、平成16年度の政管健保平均標準報酬月額を基礎として、現役世代の平均収入額を算出し(約386万円)、その金額から諸控除を差し引き、現役世代の平均的な課税所得を算出したもの。283,624円(平均標準報酬月額)×12ヶ月+453,798円(賞与の平均) ≒ 386万円。386万円-(基礎控除(33万円)+給与所得控除(131万円)+配偶者控除(33万円)+社会保険料控除(44万円)) ≒ 145万円
  3. 平成16年度の政管健保平均標準報酬月額
ただし、上記の場合であっても、以下の要件に該当する場合は、負担割合は「1割」となります *4
後期高齢者医療制度世帯の被保険者全員の収入*1の合計額が520万円*2未満(世帯の被保険者が一人の場合は、383万円*3未満)である場合等*5
国民健康保険世帯の被保険者(70~74歳に限る)全員の収入の合計額が520万円未満(世帯の被保険者 (70~74歳に限る)が1人の場合は、383万円未満)である場合等*5
被用者保険被保険者及びその被扶養者(70~74歳に限る)の収入の合計額が520万円未満(被扶養者 (70~74歳に限る)がいない場合は、383万円未満)である場合等*5
  1. 所得税法上の収入額であり、公的年金等控除、必要経費等を差し引く前の金額。
  2. 高齢者複数世帯のモデルを設定し、その世帯の課税所得が145万円となるような収入額を算出したもの。145万円+(基礎控除(33万円)+給与所得控除(90万円)+配偶者控除(38万円)+社会保険料控除(14万円)+公的年金等控除(199万円)) ≒ 520万円
  3. 高齢者単身世帯のモデルを設定し、その世帯の課税所得が145万円となるような収入額を算出したもの。145万円+(基礎控除(33万円)+給与所得控除(73万円)+社会保険料控除(11万円)+公的年金等控除(120万円)) ≒ 383万円
  4. 負担能力の判定基準は、被保険者1人1人の課税所得を基本。 しかし、税法上の控除の関係から、収入額が少ないにもかかわらず、課税所得が145万円以上となるケース(例:夫婦ともに無年金で、夫の給与収入のみ)があることから、課税所得だけでなく、収入による判定も行う。
  5. 後期高齢者医療制度の被保険者と、国民健康保険又は被用者保険の被保険者(70~74歳に限る)の収入の合計額が、520万円未満である場合も、負担割合は1割。

 ④ 合計所得、課税所得、旧ただし書き所得について

介護保険制度の保険料段階の設定や、住民税均等割の課税の基準には、「合計所得金額」が用いられており、これは、給与所得控除や公的年金控除をした後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の所得金額です。
計算項目適用
 項目合計所得金額課税所得国保の旧ただし書方式
収入(給与収入・事業収入・老齢年金収入等)
必要経費
必要経費(事業所得者)
給与所得控除(給与所得者)
公的年金等控除(年金雑所得者)
青色専従者控除・事業専従者控除
所得(収入ー必要経費)
給与所得
年金雑所得等
所得控除等
純損失の繰り越し控除×
雑損失の繰り越し控除××
人的控除等の所得控除××
基礎控除×33万円33万円
他に合計する所得
土地等に係る事業所得等の金額
株式等に係る譲渡所得等の金額
長期譲渡所得の金額(特別控除後)
短期譲渡所得の金額(特別控除後)
山林所得金額
退職所得金額分離課税分除く分離課税分除く×
* 総所得金額に含まれる総合課税分については特別控除後、分離課税分については特別控除前の金額。

 ⑤ 世帯合算

ひとり1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数の受診や、同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限る)の受診について、窓口でそれぞれお支払いいただいた自己負担額を1か月単位で合算することができます。
その合算額が一定額を超えたときは、超えた分が高額療養費として払い戻されます。

ただし、69歳以下の方の受診については、21,000円以上の自己負担のみ合算されます。

 ⑥ 多数回該当

過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。
所得区分多数回該当の場合の上限額
年収約1,160万円〜
標報83万円以上
課税所得690万円以上
140,100円
年収約770万円〜約1,160万円
標報53万円以上
課税所得380万円以上
93,000円
年収約370万円〜約770万円
標報28万円以上
課税所得145万円以上
44,400円
年収156万〜約370万円 
標報26万円以下
課税所得145万円未満等
44,400円
住民税非課税世帯24,600円

その他

  • 国民健康保険、後期高齢者保険は役場、被用者保険は職場の総務課などに申請します。
  • 食費、個室代(差額ベッド代)、先進医療にかかる費用は高額療養費の対象外です。
  • 高額療養費は申請してから3ヶ月程度後に振り込まれます。これはレセプトが確定後に各医療保険で審査するからです。
  • 支給申請は診療を受けた翌月から2年です。その後、権利は消滅します。
  • 高額療養費は各医療保険で共通の負担上限ですが、健康保険組合には組合独自の付加給付として、共通の限度額よりも低い負担を設定しているところもあります。
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度は、毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担合計が基準額を超えていた場合に超えた金額を払い戻す制度です。高額療養費制度が月単位で負担を軽減するのに対し、合算療養費制度は年単位でさらに負担を軽減する制度です。
  • 世帯合算は、住民基本台帳上の世帯ではなく、同一の医療保険に加入する家族を単位とします。お互いの住所が異なっていても同じ医療保険であれば合算します。逆に、夫婦で別々の健康保険に加入していれば住所が同じでも合算対象にはなりません。
  • 総合病院で複数の診療科に受診した場合、一つの医療機関として高額療養費を請求できます。ただし、医科と歯科、入院と外来は別れます。

負担限度額認定証・標準負担額減額認定証

限度額を超える分を立て替えなくてもよい方法が、事前に限度額適用認定証または限度額適用・標準負担額減額認定証(住民税非課税世帯の場合)を入手して、医療機関の窓口に提示する方法です。そうすることで、窓口での支払いが自己負担限度額までで済みます。

入院中であれば、その月中に医療機関の窓口に提示すれば、月頭から有効になります

特定疾病療養受療証

療養期間が著しく長期にわたり、高額の治療費が必要となる次のような傷病の場合、保険医療機関等の窓口で特定疾病療養受療証を提示することで、一部負担金を一定額(自己負担限度額:10,000円若しくは20,000円)に抑えることができます。
  • 血液透析や腹膜透析を開始して最初に申請する制度です。
  • 診療のある月の標準報酬月額が53万円以上である70歳未満の被保険者またはその被扶養者については、自己負担限度額は20,000 円となります。

 ① 特定疾病の対象となる疾病

  • 血友病
  • 人工透析を必要とする慢性腎不全 全国腎臓病協議会
  • 抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(HIV感染を含む)

 ② 手続方法

必要書類
申請の流れ
  • 特定疾病認定申請書を記入する。
  • 医療機関にて医師の証明を受ける。
  • 加入している保険者(国民健康保険・社会保険など)の申請窓口にて申請を行う。
  • 受療証が届いたら、通院している医療機関へ提示する。

 ③ 留意事項

申請日の属する月の1日から適用され、月をまたぐと対象になりません。月末に透析導入となり手続きが遅れて次の月に受領証が交付された場合は前月の医療費には適用されないので注意が必要です。
  • 特定疾病の1万円は、病院別・入院外来別となります。
  • 透析治療等、対象となる疾病以外の治療には適用されません。
  • 身体障害者手帳の有無に関係なく、透析を継続して受けていればこの制度を利用できます。
  • 原則的には腎移植者は対象疾患からはずれるため適用されないことになっていますが、透析治療を受けていた方が腎移植術を受けた際、移植腎の厳重な管理を要することや移植腎の機能廃絶により透析に戻る可能性があるという観点から継続を認めている健康保険組合もあります。
  • 健康保険証が変わると特定疾病療養受療証も、新たに変わった健康保険の窓口で手続きが必要です。

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